H28年度講演会実施報告

題目:実践Immutable Infrastructure入門 ~新米エンジニアがクラウドの裏側を紹介~
講師:堀内 晨彦 氏(エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 クラウドサービス部)
日時:2017年02月17日 15:00-18:00
場所:香川大学 工学部 1909教室(香川県高松市林町2217)
聴講:44名

堀内氏は,エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズで,ベアメタルクラウドの開発に携わられているエンジニアです.学生時代には,クラウドを使った分散Webシステムの研究の傍ら,勉強会やコミュニティ活動に参加され,HubotやSensuの勉強会を主催されたこともあります.会場は,学生を中心に40名以上が集まり,興味深い講演に,時間もあっという間に過ぎてしまいました.
近年,Immutable Infrastructureという考え方が浸透してきています.これは,サーバが必要になったら作り,必要なくなったら捨てるというような繰り返しで構成を変えていく仕組みです.そこで生かされているコンテナ技術について,今回の講演ではハンズオンを交えて,触れさせて頂きました.
始めに,堀内氏の学生時代の経験から,大学生のうちにどのような目標を立てるべきかについて説明していただきました.特に,大学の外に出て勉強会に参加してみるなどの活動を行ったり,目標とするエンジニアを見つけることが重要であるとのお話でした.
次に,Immutable Infrastructureと,変更管理について詳しく説明していただきました.サーバの変更管理は,新しいソフトウェアを導入する度に,手順書を書き作業履歴を残すなど,大変手間が掛かるものです.そこで登場したのが,Immutable
Infrastructureであるとの説明でした.これは,状態管理が面倒なら管理しなければ良い,という考え方に基づいたものだそうです.作り直しを行うことで,状態や差分の管理を行う必要がなく,出来上がったインフラだけ管理すれば良いという利点があるとのことでした.
つづいて,Immutable Infrastructureのデメリットとコンテナ技術について説明していただきました.まず,デメリットとしては,サーバを使い捨てるために,データを持っておくことが出来なかったり,出来上がったサーバを管理する方法を別途に考える必要があるとのお話でした.そこで,コンテナ技術を用いて,これらの問題を解決しようということでした.コンテナ技術とは,OSの上に隔離された空間を作って,その中で別のOSを動かす技術です.ここでは,近年話題のDockerについて説明がありました.
Dockerとは,コンテナを動かす実行環境の一つです.コンテナのイメージを簡単に作れたり,配布できたりするなど,手軽に便利にコンテナを扱うことが出来るため普及したとのことです.
最後に,Dockerについてのハンズオンを交えた説明がありました.ここでは特に,Dockerは仮想マシンではないということが強調して説明されました.コンテナには1つの仕事しかさせない,イメージを小さくする,コンテナしか動かさないシンプルな環境で動かすなど,いくつかの注意点が説明されました.更に,実際のツールとして,Docker
MachineというDocker専用の仮想マシンを簡単に作れるツールと,Docker
Composeという複数のコンテナを一緒に管理できるツールの使い方が紹介されました.
ハンズオンでは,自分の好きなプログラミング言語を動かしてみるなどの演習が行われました.技術力の高さに応じて,それぞれ演習できる内容が用意されており,どの参加者をも飽きさせない演習内容でした.
今回の講演は,専門性の高い内容もありましたが,聴講者の多くが,キャリア形成や技術力醸成のために,熱心に耳を傾けていました.講演後の懇親会でも,聴講者から積極的に質問などがおこわなれ,大いに議論が交わされました.以上,大変,有意義な講演会でありました.


題目:イノベーションとデザイン思考 - 全ての答えはユーザにある –
講師:菊池 純男 氏((株)日立製作所 ICT事業統括本部 経営戦略統括本部)
日時:2017年1月19日 14時30分~16時00分
場所:愛媛大学 共通講義棟C EL44講義室(愛媛県松山市文京町3)
聴講者:59名

まず,イノベーションとは,新しいアイデアから社会的に大きな変化をもたらす変革のことで,新しいテクノロジーだけでなく,新しいビジネスモデルなどもイノベーションに含まれるというお話がありました。その一例として,コンプレッサーの利用者が欲しいのは圧縮した空気であり,コンプレッサーそのものではないことに着目し,コンプレッサーを無償で貸与して,使った分だけ課金するというビジネスが成功した例が紹介されました。

次に,近年は「物」ではなく,「サービス」がビジネスにおいて重要になっているというお話がありました。その一例として,車を一台も所有することなく,配車サービスを提供して成功した企業の例が紹介されました。また,カメラやスケジュール帳など,従来は「物」として持ち歩いていたものが,現在はスマートフォンの中に収まっていること,「物」づくりは,近年増加しているFabスペースで3Dプリンターやレーザーカッターなどを使うことによって,誰でもできるようになってきたことなどが紹介されました。

そして,そのような時代では,ある技術で何ができるかを考えて物を作るのではなく,最新のデジタルテクノロジーを活用して,ユーザ目線でビジネスをゼロベースで再定義することが重要であるというお話がありました。世の中には「きれいに掃除をしたい人のための掃除機」と「できれば掃除をしたくない人のための掃除機」があるように,課題設定の違いで作るものは変わってくるため,社会に存在する課題を正しく把握することが重要であるとのお話がありました。

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題目:マルウェアの手口と対策 ~マルウェアみな駆逐すべし、慈悲はない~
講師:忠鉢 洋輔 氏(情報セキュリティ大学院大学特任研究員,アクティブディフェンス 代表取締役)
日時:2016年12月14日 17:30-19:00
場所:香川大学工学部 1号館1909教室 (香川県高松市林町2217-20)
聴講者:38名

忠鉢先生は,マルウェア解析やOSカーネルレベルでのセキュリティを専門とされている研究者であり,日本でのハッキング競技SECCONの運営に関わり,セキュリティの国際的なカンファレンスであるBlack Hatでも講演されています.会場は学生を中心に30名以上が集まり,忠鉢先生のユーモア溢れる講演に,90分があっという間に過ぎてしまいました.

世界中に出回っているマルウェアは,その作成者であるクラッカー達が日々開発を進めています.一方,セキュリティ研究者は,マルウェアを根絶やしにすべく心血を注いでいます.そのため,マルウェア対策は,いたちごっこと揶揄される面もあります.「マルウェアみな駆逐すべし、慈悲はない」と題された本講演は,マルウェア対策の技術的な面白さやマルウェア対策の研究開発に従事する人間の懊悩というテーマが込められていました.

始めに,セキュリティのエンジニアがこれから生き残っていくには,どのようなスキルが必要であるのかを説明していただきました.きちんと勉強し,成果を出せば,欧米だけでなく,イスラエルからも招聘されるなど,世界中で引っ張りだこだそうです.

その後,マルウェアとは一体何であるのか,誰が何の目的で作成しているのかについて詳しく説明していただきました.特に,作成者の立場によって作成するマルウェアの種類やその目的が大きく違うという点が印象的でした.

次に,マルウェアを検知する仕組みとそれを回避する手法,マルウェアの新種状況について説明していただきました.マルウェアは2016年だけでも1億体の新種が発見され,総流通数は6億体を超えると言われています.

最後に,マルウェアに対する一般的な対策や,近年のマルウェアの動作傾向について説明していただきました.近年のマルウェアは,偽装したexeファイルや悪意あるJavaScriptを実行させたり,脆弱性を突いて攻撃コードを実行させるものが多いようです.

私たちが普段から取ることのできる対策として,アンチウイルスソフトの導入,OSのアップデートの即時適用,認証付きProxyを介したインターネット接続などが挙げられます.今回の講演は,非常に専門性の高く,学生には難しい内容もありました.しかし,聴講者の多くは,普段はなかなか聴くことのできない,マルウェアに関する講演に熱心に耳を傾けていました.講演後の懇親会でも,個人で活発に忠鉢先生に質問したり,歓談していました.以上,非常に有意義な講演会となりました.

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題目:イノベーションに向けてのUXデザイン
講師:中道 上 氏 (福山大学工学部)
日時:2016年 12月 7日(水) 16:20 ~ 17:50
場所:高知工科大学香美キャンパス C102教室
聴講者:約100名

製品開発の超上流工程に位置するUXデザインについて,講師の中道先生のご経験をまじえた楽しくて分かりやすい講演が行われました.会場である高知工科大学の学生を中心として約100名が聴講しました.講義の後半は実際にペルソナを作る演習が行われ,ともすれば抽象的な説明になってしまうソフトウェア工学の上流工程を,具体的に分かりやすく説明してくださいました.


H28年度支部特別講演会
題目:人工知能は世の中をどう変えるか
講師:松原 仁 氏(公立はこだて未来大学 複雑系知能学科 教授)
日時:2016年 6月10日(金) 15:00-16:30
場所:徳島大学理工学部工業会館メモリアルホール(徳島市南常三島町2-1)
聴講者:102名

夏を思わせる日差しが照りつける6月10日,公立はこだて未来大学の松原仁先生をお招きして,H28年度四国支部特別講演会が開催されました.松原先生は情報処理学会理事でもあり,四国支部報告会において学会のビジョンなどをご説明いただいた後に講演会が始まりました.聴講者は学内外の研究者・学生はもちろん,企業の方や地元の高校生も含め,100名を超える盛況ぶりでした.
松原先生は,今もっともホットな研究分野0610_01である人工知能(AI)の最先端を走っておられ,(冬の時代もあった)AIの歴史,コンピュータチェス・将棋・囲碁の急速な発展,コンピュータによる小説(ショートショート)創作,ディープライニング,技術的特異点(シンギュラリティ)など情熱的な語り口で分かりやすく説明してくださいました.
技術的な視点のみならず,AIが社会とどのような接点をもち,われわれ人間とどのように共存していくべきなのか,法律などの視点も含め,現在と未来を深く考えさせられる,あっという間の1.5時間でした.今回の講演会でも(昨年6月の特別講演会,11月の講演会に続き)Twitterによるコメント・質問をプ0610_04ロジェクタで表示することを試みました.高校生からの質問もあり,また,講演会終了後にAIに関して松原先生と院生とのディープなディスカッションもあったようで,大変有意義な講演会になりました.
(なお,本講演の様子は翌日の地元新聞に記事として掲載されました.)

【文責:四国支部幹事(徳島大学)光原弘幸】


題目:情報分野の専門家としての職と求められる能力
— IT業務の魅力と未来へのQ&A —
講師:下房地 毅 氏(独立行政法人 情報処理推進機構(IPA) IT人材育成本部 イノベーション人材センター 調査役)
日時:2016年 5月20日(金) 14:30-16:00
場所:愛媛大学工学部 EL45教室(松山市文京町3)
聴講者:72名

講演は,主に,これから情報分野のエンジニアを目指す学部生を対象として開催されました.専門教育を学び出して時間の浅い学生の多くは,情報分野にどのような職種があるのか,また,活躍場である産業界で,どのような業種や企業で,情報分野の専門家が活躍しているのかといった情報を持ち合わせていません.そのため,自身の将来像をイメージすることも困難です.
今回の講演では,情報分野の専門家として,社会で活躍している若手の複数の事例を具体的に示すところから始まった.また,3Kや24Kなどと呼ばれることもある情報分野の職の環境が,実際にはそうではないことなども紹介されました.
その後,産業界が,情報系技術者,専門家に求める能力やコンピテンシーについて,客観的な調査に基づいた紹介が行われました.
最後に,IPAが行っている異能人材発掘の取り組みについても,紹介され,果敢に挑戦することの大切についても,お話し頂きました.
講演後の質疑の時間では,学生から,大学院進学と学部で就職することの違いなど,複数の質問が行われました.また,講演終了後にも,複数の学生が講師に質問に来るなど,学生にとって,関心の高い,また,有意義な内容でした.